読んだ

最悪 (講談社文庫)

最悪 (講談社文庫)

分厚いのだけど、半分を過ぎたあたりから止まらなくなって一気読みしてしまうような小説が好き。
読み終わって、解説に書いてある「感情のローラーコースター」と「物語のローラーコースター」という表現が実に的確だなあと思った。
感情のローラーコースターが向かう先はタイトルの通り「最悪」という谷底。三者三様の最悪な出来事にさらに最悪が上塗りされて三人ともが追い詰められて、さらなる最悪へと落ちていく。一方で物語のローラーコースターは3人が交錯して絡み合うあたりから一気に速度を増していく。
感情移入しようものなら容赦なく鬱になれるような最悪なのに、物語の構成がグイグイ引き込んで離してくれない。全然陽気じゃないのにエンタテインメントしてるってのは、よくよく考えれば凄いバランスだなあと思う。


あと、主題として捉えたのが「人それぞれにとっての最悪は違う」ってことなんだけど、川谷と和也が口論をしているシーンは象徴的だと思った。「あんたはマシだ。おれなんか…」の理論。
その対になると思われる、川谷妻の「人が幸せになれるのは現状の二割増」理論も、なるほど興味深いと思った。